犬の悪性リンパ腫で使われる抗がん剤はもともと人用です。抗がん剤の組み合わせ方も人の治療に準じています。
それぞれの抗がん剤をどのように投与していくかは、過去の臨床試験で記された治療計画書に基づきます。その文書はプロトコールと呼ばれ、犬の悪性リンパ腫の治療では多用されます。
もしかすると飼い主様も耳にすることがあるかもしれません。似たニュアンスの言葉にレジメンがあります。レジメンは現場での具体的な治療計画を指します。 複数の抗がん剤を組み合わせるプロトコールには、有名な「CHOPプロトコール」「COPプロトコール」「ウィスコンシン-マジソン・プロトコール(UW-M)」などがあります。
目次
犬・猫のリンパ腫のプロトコール
犬のリンパ腫や猫のリンパ腫に対する抗がん剤治療は、組み合わせや使用量・順番がマニュアル化されており、これをプロトコールと呼んでいます。
主に使用されるプロトコールは以下の3つとなります。
- COPプロトコール-犬・猫のリンパ腫
- CHOPプロトコール-犬・猫のリンパ腫
- UM-Wプロトコール-犬・猫のリンパ腫
COPプロトコール-犬・猫のリンパ腫
CHOPプロトコールが確立される前に広く用いられていた、基本的な多剤併用療法です。
多中心型リンパ腫では60-70%で寛解、生存期間中央値は約半年です。
C:シクロホスファミド
O:ビンクリスチン(商品名:オンコビン)
P:プレドニゾロン
の頭文字を取って、「COP」と呼んでいます。
CHOPプロトコール-犬・猫のリンパ腫
COPプロトコールにドキソルビシン(H:ハイドロキシダウノルビシン)を追加したプロトコールです。
ドキソルビシンを追加することで、更に優れた効果が現れるとされています。
多中心型リンパ腫では80-90%で寛解、生存期間中央値は約1年です。
UM-Wプロトコール-犬・猫のリンパ腫
ウィスコンシン大学マディソン校で開発されたプロトコールで、CHOPにL-アスパラギナーゼを追加しています。
維持療法として用いられるプロトコールです。
寛解率、生存期間中央値はCHOPプロトコールと同様です。
全25週のプロトコールとなるため、副作用等により途中で中止せざるを得ない場合もあります。
クロラムブシルとプレドニゾロン-猫のリンパ腫
猫の低グレード消化器型リンパ腫で、クロラムブシルとプレドニゾロンの組み合わせが最適です。
これらのプロトコールはすべてを完了できるに越したことはないのですが、途中で重篤な副作用を起こしてしまい継続できなくなるケースも少なくありません。
抗がん剤の使用意義は、あくまでも『腫瘍による諸症状を緩和し、QOL(生活の質)を改善・維持する』ことですので、プロトコールを行っている間、ご愛犬のQOLが保たれているかどうか、しっかりと経過を見てあげてください。
以下は、主に使われる抗がん剤の種類とその作用・副作用です。
抗がん剤の種類
シクロホスファミド
製品名:エンドキサン
経口投与、若しくは静脈投与するお薬です。
DNA合成阻害作用から腫瘍細胞の増殖を抑制する抗がん剤で、CHOP、COP、UW-Mプロトコールで使われています。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性、無菌性出血性膀胱炎
ビンクリスチン
製品名:オンコビン
静脈投与するお薬です。
細胞の微小管構造形成を阻害する抗がん剤で、CHOP、UM-Wプロトコールで使われています。
単独で使用されることは少なく、多剤と併用して使用します。
血管周囲に漏れ出た場合、重大な皮膚炎を引き起こします。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性、末梢神経障害(後肢虚弱、排尿困難など)
ドキソルビシン
製品名:アドリアシン、ドキソルビシン
静脈投与するお薬です。
DNA複製時の二重らせん構造に関わる重要な酵素を阻害することで、リンパ腫細胞の増殖を抑えます。
近年、動物の化学療法プロトコールで最も効果的な薬剤とされていて、CHOP、UM-Wプロトコールで使われています。
血管周囲に漏れ出た場合、重度の皮膚壊死を起こし、治癒しないケースもあります。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性(重度)、(猫の場合)腎毒性
※ドキソルビシンは、コリーやシェットランド・シープドック(シェルティー)、猫で重篤な毒性が発現するため、使用には注意が必要です。
腎障害を持つ猫の場合、ドキソルビシンの代わりにミトキサントロンが使われます。
L-アスパラギナーゼ
製品名:ロイナーゼ
皮下投与するお薬です。(筋肉内投与を推奨する専門家もいらっしゃるそうです)
腫瘍細胞が増殖するときに必要なアスパラギン(アミノ酸の一種)を分解し、栄養不足を引き起こして死滅させる作用を利用した抗がん剤です。
比較的副作用が少ないお薬ですが、繰り返し投与を行うことでアナフィラキシーを引き起こすことがあるため、注意が必要です。
(予防として、投与15-30分前に抗ヒスタミン剤を前処置として投与することがあります)
単独使用でも功を奏する場合がありますが、腫瘍細胞がL-アスパラギナーゼに耐性を持つスピードはとても早いとされているため、その後の治療が重要となります。
副作用:アナフィラキシー症状
CCNU
製品名:ロムスチン
経口投与するお薬です。
DNA合成阻害作用から腫瘍細胞の増殖を抑制する抗がん剤で、リンパ腫、肥満細胞腫、組織球疾患のほか、血液脳関門を通過するため脳腫瘍で使用されます。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性、治療継続により肝不全を引き起こすこともあります。
メトトレキサート
製品名:メソトレキセート
経口投与、若しくは静脈投与するお薬です。
細胞内でDNAとRNAの合成を助ける酵素の働きを妨げて、がん細胞の増殖を抑える葉酸代謝拮抗剤です。
副作用:骨髄毒性、腸上皮の損傷
アクチノマイシン
製品名:コスメゲン、ダクチノマイシン
静脈投与するお薬です。
DNAに結合してRNAの合成を抑制し、がん細胞の増殖を阻止する作用があり、腫瘍細胞内に留まりやすい性質があります。
血管周囲に漏れ出た場合、重度の皮膚壊死を起こします。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性
クロラムブシル ※日本未承認
製品名:クロケラン、ロイケラン、リューケラン
経口投与するお薬です。
DNA合成阻害作用から腫瘍細胞の増殖を抑制する抗がん剤で、シクロホスファミドで無菌性出血性膀胱炎を発症してしまった場合やその危険性が高い場合に、この薬剤を使用することがあります。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性、神経症状
メルファラン
製品名:アルケラン
経口投与するお薬です。
DNA合成阻害作用から腫瘍細胞の増殖を抑制する抗がん剤で、形質細胞腫でプレドニゾロンともに使用される(MP療法)ことがあります。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性、肝毒性
シタラビン
製品名:キロサイド
皮下投与、若しくは静脈投与、くも膜下腔投与するお薬です。
アメリカで最もよく使用されている抗がん剤の1つで、細胞内でシタラビン三リン酸塩というピリミジン類似体に変換されることで、腫瘍細胞のDNA合成を抑制し、増殖を抑える作用があります。
血液脳関門を通過数rため、脳腫瘍に使用されることもあります。
副作用:消化器毒性、骨髄毒性、肝毒性、シタラビン症候群(発熱、筋肉痛、骨痛、結膜炎、斑状丘疹性皮疹など)
消化器毒性:口内炎や嘔吐、下痢、血便、便秘 など。
肝毒性:肝臓の破壊によるGOT、GPT、γ-GPT、ビリルビンなどの上昇 。
腎臓毒性:腎臓の破壊によるBUN(尿素窒素)、Cre(クレアチニン)などの上昇。
神経症状:しびれ、麻痺、痛み、味覚異常、嗅覚異常など。
また、抗がん剤という名前の反面、『発がん性』も持つため、リンパ腫以外の腫瘍を発生させてしまう恐れもあります。
冒頭にも書きましたが、抗がん剤の使用意義は『腫瘍による諸症状を緩和し、QOL(生活の質)を維持する』ことです。
腫瘍の縮小や寛解がみられても、副作用によるQOL低下がみられては元も子もありません。
腫瘍に栄養を取られずに体力をつけていくための『低糖質高タンパク食』に切り替え、副作用で治療をリタイアしないための体力をつけてください。
当研究室ではコルディを投与し、さらに肝臓の働きを保護するために国産SPF豚プラセンタエキス末を併用することで免疫力の回復がみられるか研究を続けております。
本来は免疫力ががん抑止の主役であり、抗がん剤はその補助にすぎないのです。
ぜひ免疫対策を積極的に行ってください。
当研究室ではさまざまな治療の「いいとこ取り」に可能性があると考えております。
抗がん剤一本槍では明らかに力不足です。それを補完する治療を組み合わせていくことが大切だと思います。
抗癌剤について、十分な情報を知っていただきたいと思います。是非以下の記事もご覧ください。
抗癌剤による副作用対策に免疫のチカラ
抗癌剤治療を受ければ、ほぼ間違いなく副作用があります。
たとえ癌が小さくなったとしても副作用でぐったりしてしまっては、犬や猫の生活の質が保てているとは言えません。
コルディ研究室ではコルディを投与することで免疫力が高まり副作用が軽減するか、副作用のダメージから早く回復できるのか研究を進めています。
また抗癌剤治療中は肝機能低下のリスクもありますのでコルディと合わせて国産SPF豚由来プラセンタキス末を併用し肝機能のケアを行う事でQOL(生活の質)改善が期待できるのか研究を行っております。
ご不明な点がございましたら、お問合せ下さい。
※免疫調整機能が期待できる特定種の冬虫夏草の菌、コルディの人への応用も研究しております。
監修獣医師:林美彩 所属クリニック:chicoどうぶつ診療所
代替療法と西洋医学、両方の動物病院での勤務経験と多数のコルディの臨床経験をもつ。 モノリス在籍時には、一般的な動物医療(西洋医学)だけでは対応が困難な症例に対して多くの相談を受け、免疫の大切さを痛烈に実感する。
ペットたちの健康維持・改善のためには薬に頼った対処療法だけではなく、「普段の生活環境や食事を見直し、自宅でさまざまなケアを取り入れることで免疫力を維持し、病気にならない体づくりを目指していくことが大切である」という考えを提唱し普及活動に従事している。
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