愛犬が「がん」と診断されたとき、「できる限りの治療を受けさせたい」と思う一方で、「つらい思いをさせたくない」「治療を受けない選択をしてもよいのだろうか」と悩まれることもあると思います。

また、シニアであったり、衰弱しているなど、体力的に身体に負担の多い治療を受けることができない、抗がん剤治療は受けられない、治療を受けさせられないということもあると思います。獣医師から治療することができないといわれてしまい途方に暮れている方もいらっしゃると思います。

本記事でいう「治療しない選択」とは、がんの縮小や進行の抑制を主な目的とした治療を行わず、苦痛の緩和と日々の生活を支えるケアを中心にする選択です。痛みや苦しさへの対処までやめる、という意味ではありません。

治療するか、治療しないかを一律に決めるのではなく、愛犬の状態、期待できる効果と負担、QOL(生活の質)、ご家族が大切にしたい時間を整理して考えていきましょう。

体力的に治療を受けられない、治療できませんと言われてしまったという飼い主様にも、ご自宅で取り組めることのヒントになれば幸いです。

犬のがんで「治療しない」ことと「何もしない」ことは違います

犬のがんには、手術、抗がん剤、放射線治療などの治療法があります。期待できる効果や適した方法は、がんの種類や進行度、愛犬の全身状態によって異なります。治療によって生存期間の延長や生活の質の改善が期待できる場合もあり、「がん治療は体への負担ばかりが大きい」とは限りません。

一方で、がんに対する治療を行わない方針でも、痛みや吐き気などを和らげ、過ごしやすい生活を支えるための医療やケアは続けられます。こうした苦痛への対処を中心とするケアを「緩和ケア」といいます。緩和ケアは終末期だけのものではなく、がんに対する治療と並行して行うこともできます。

大切なのは、治療の有無だけで考えるのではなく、「何を目指すのか」「どのような苦痛を減らしたいのか」「そのために何を行うのか」を獣医師と共有することです。

治療方針を考える前に、緊急性を確認しましょう

診断を受けてすぐに、気持ちや考えを整理できなくても無理はありません。無理に前向きになったり、愛犬の前でいつも笑顔を作ったりする必要はありません。ご家族や獣医師に、不安や迷いをそのまま伝えてください。

ただし、がんの種類や全身状態によっては、速やかな対応が必要です。例えば血管肉腫では、腫瘍からの出血によって突然倒れたり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。呼吸が苦しそう、突然倒れた、歯ぐきが白っぽく強い脱力があるといった場合は、治療方針が決まっていなくても、すぐに動物病院へ連絡してください。

診察では、「今すぐ対応が必要なことは何か」「治療方針をいつまでに決める必要があるか」を確認しましょう。別の獣医師の意見も聞きたい場合は、そのための時間を取れるかも併せて相談します。

犬のがんで治療しない選択を考える3つの判断基準

治療を受ける場合と受けない場合を比べるときは、「治療の目的と見通し」「愛犬の生活への影響」「ご家族が続けられるケア」の3つに分けると、確認したいことを整理しやすくなります。

1. 治療の目的と、受ける場合・受けない場合の見通し

まず、提案された治療が、完治、がんの進行の抑制、症状の緩和のうち、何を主な目的としているのかを確認しましょう。

がんの診断名だけでなく、発生した場所や広がり、持病などによっても判断は変わります。「治療を受けた場合に何が期待できるか」と同時に、「受けない場合にどのような症状や経過が考えられるか」を聞くことが大切です。

「治療で何が改善する可能性がありますか」「効果はいつ、どのように確認しますか」と質問すると、ご家族が大切にしたいことと治療の目的を照らし合わせやすくなります。

2. 愛犬の生活にとって、効果と負担がどう釣り合うか

治療の負担を考えるときは、副作用だけでなく、通院や入院、自宅での投薬なども確認しましょう。その一方で、がんによる痛みや不調が治療によって軽くなる可能性も含めて考えます。

例えば、ご家族が「食事を楽しめること」「落ち着いて眠れること」「家で一緒に過ごせること」を大切にしているなら、その希望を獣医師に伝えてください。

治療を受けないことが、必ずしも苦痛の少ない経過につながるわけではありません。治療に伴う負担と、がんそのものによる負担の両方を踏まえ、症状への対処を考える必要があります。

3.ご家族が無理なく続けられるケアか

通院の頻度、費用、自宅での投薬や介護、留守番の時間なども、治療方針を決めるうえで大切な条件です。ご家族の事情を含めて相談することは、愛犬のために続けられる方法を探すことにつながります。

「この頻度なら通院できる」「日中の介護が難しい」「費用はこの範囲で考えたい」と、具体的に伝えましょう。条件を共有したうえで、実施できる治療やケア、別の選択肢について説明を受けてください。

治療後に元気や食欲が落ちたときは、自己判断で中止しない

治療を受けたあとに元気や食欲が落ちると、「続けることで、かえって苦しめているのでは」と心配になるかもしれません。しかし、食欲低下などの変化は、治療の影響だけでなく、がんそのものや別の病気によっても起こり得ます。症状だけで原因を決めつけず、担当の獣医師に連絡してください。

連絡するときは、変化が始まった時期、食べた量、活動の様子、嘔吐や下痢の有無などを伝えましょう。治療前と比べて何が変わったのかも、相談するための材料になります。

そのうえで、治療の継続・休止・変更や、症状の緩和を中心とした方針について相談します。処方された薬や治療予定は、自己判断で変更せず、病院の指示を確認しましょう。

治療の有無にかかわらず、QOLを大切にする

QOLとは、生活の質のことです。愛犬のQOLを考える際は、病気や治療の状態だけでなく、苦痛が和らいでいるか、食事や休息が取れているか、好きなことを楽しめているかにも目を向けます。

「元気そう」「つらそう」という印象に加えて、日々の様子を記録しておくと、変化を振り返り、獣医師と共有しやすくなります。

家庭で記録したい6つの観察項目

以下は、診察で日々の変化を伝えるための観察メモの例です。治療の可否を判定する検査や、点数で結論を出すための表ではありません。

観察すること 記録する内容の例
苦痛・呼吸の様子 苦しそうな時間がないか、呼吸の様子が普段と違わないか
食事・水分 何をどれくらい食べたか、水が飲めているか
睡眠・休息 落ち着いて眠れているか、休めずにいる時間がないか
移動 立ち上がりや歩行に困っていないか、介助が必要か
排泄 尿や便が出ているか、排泄時に困っている様子がないか
楽しみ・反応 好きなことや、ご家族の声かけにどのように反応するか

体重についても、測定できる範囲で記録しておきましょう。食事量や体重の変化は、栄養状態を相談する際の情報になります。

一つの項目だけで治療を続けるかどうかを決めるのではなく、愛犬の全体の様子と変化を獣医師に伝えてください。「比較的穏やかに過ごせた日」「つらそうな時間が多かった日」をカレンダーに残す方法もあります。

自宅でできることと、獣医師に相談することを分ける

自宅では、休みやすい寝床を用意する、移動の負担を減らす、体調に合わせて散歩やふれあいの時間を調整するなど、愛犬が過ごしやすい環境づくりに取り組めます。
一方で、痛みや吐き気、呼吸の苦しさなどへの対応は、獣医師と相談しながら進めることが必要です。記録を続けることよりも、症状への対応を優先すべき場合があります。特に呼吸困難や突然の虚脱では、次の診察日まで待たずに病院へ連絡してください。

食事やサプリメントは、役割と限界を確認する

がんと診断されたことだけを理由に、食事を一律に制限しない

食事で大切なのは、愛犬の状態に合った栄養を、必要な量だけ取れるようにすることです。食べられている量、体重の変化、持病などを踏まえて、獣医師と食事を相談しましょう。食欲が落ちている場合は、食事内容だけでなく、痛みや吐き気などの影響も確認する必要があります。

「糖質を減らせばがんを抑えられる」と考え、自己判断で一律の糖質制限を行うことは避けましょう。また、EPA・DHAなどの成分も、普段の食事に含まれる量や愛犬の状態を確認せず、追加すればよいというものではありません。

コルディなどのサプリメントを検討するときの注意点

「免疫力を高める」という説明や利用者の体験談だけでは、がんの進行抑制、治癒、延命といった効果を判断できません。サプリメントを検討するときは、期待される働きだけでなく、その根拠と安全性を確認することが大切です。

コルディを含む個々の商品についても、原材料や成分、どのような対象・方法で研究されているか、何が確認されていて何が分かっていないかを確認しましょう。

使用を検討している商品や、すでに与えているものは獣医師に伝えてください。サプリメントの利用を、必要な診察や苦痛への対処を控える理由にしないことが大切です。

末期がんで余命を伝えられたときに確認したいこと

「治療を受ければこのくらい、受けなければこのくらい」と余命を説明されると、数字ばかりが気になってしまうかもしれません。

しかし、示された期間は、愛犬の生存期間を保証するものではありません。同じ病名でも分類や治療への反応によって経過は異なります。また、「生存期間の中央値」は、個々の犬がその期間だけ生きるという意味ではありません。

余命については、数字と併せて、どのようながん・状態の犬のデータなのか、予測にどのくらい幅があるのかを確認しましょう。「治療を受けない場合」の説明に、症状を和らげる薬やケアが含まれているかも確認しておくと、比較する条件を整理できます。

治療しない方針でも、これからのケアを具体的に決める

がんに対する治療を行わない場合も、今後起こり得る変化、日々のケア、急変時の連絡先を獣医師と相談しましょう。夜間や休日にどこへ連絡するか、苦痛を十分に和らげられなくなったときにどのような対応を考えるかも、事前に共有しておくことが大切です。

残された時間の長さだけでなく、愛犬が今日をどのように過ごせているかにも目を向けてください。ご家族だけで結果への責任を背負う必要はありません。

後悔を減らすために、判断した理由を残しておく

どのような選択をしても、「別の方法がよかったのでは」と気持ちが揺れることはあるかもしれません。後悔を完全になくすことは難しくても、その時点で分かっていたことと、大切にしたかったことを整理することはできます。

「家で過ごせる時間を大切にしたい」「苦痛を減らしたい」「改善が期待できる治療は検討したい」など、ご家族の希望を言葉にしてみましょう。説明を受けた選択肢や、方針を決めた理由を短いメモに残す方法もあります。

迷いが残る場合は、担当の獣医師に再度説明を求めたり、がん診療に詳しい獣医師への紹介を相談したりしてください。セカンドオピニオンを受ける際は、必要な検査結果や診療情報、受診までの対応を、現在の病院と相談先に確認しましょう。

よくあるご質問

犬のがんで治療しない選択をするのは、かわいそうなのでしょうか?

治療の有無だけで判断するのではなく、愛犬の苦痛にどう対応し、生活をどう支えるかを考えることが大切です。がんに対する治療を受けない方針でも、症状を和らげるための医療やケアについて相談できます。必要な対処を続けながら、愛犬の状態に合う方針を獣医師と考えましょう。

治療を受けない場合、どのくらい生きられますか?

「犬のがん」という情報だけで、生存期間を一律に示すことはできません。がんの種類や広がり、全身状態、行うケアによって経過は異なります。担当の獣医師に、見通しの根拠と予測の幅を確認してください。

抗がん剤治療は、必ずつらい副作用が出るのでしょうか?

すべての犬に強い副作用が出るわけではありません。一方で、吐き気、食欲低下、下痢などが起こる場合もあります。使用する薬で想定される変化と、病院に連絡する目安を事前に確認しましょう。

食事やサプリメントだけで、がんへの対応はできますか?

食事やサプリメントだけで、必要ながん診療や苦痛への対処を置き換えられるとは考えないようにしましょう。食事は栄養状態を支えるために調整し、サプリメントは根拠や安全性を確認したうえで獣医師に相談してください。

再発した場合も、もう一度治療を検討できますか?

再発した場合の選択肢は、がんの種類、再発した場所、これまでの治療、現在の体調によって異なります。以前と同じ治療を続けるかどうかだけでなく、症状の緩和を中心とした方法も含めて、目的と負担を改めて相談しましょう。

費用や通院の事情を、獣医師に相談してもよいのでしょうか?

ご家族が対応できる費用や通院の範囲も、ケアを考えるための重要な情報です。難しいことを隠さず伝え、愛犬に必要な対応の優先順位や、続けられる方法について相談してください。

まとめ|治療の有無より、愛犬のために何を続けるかを考える

犬のがんで治療しない選択を考えるときは、まず緊急性を確認し、治療の目的と見通し、愛犬の生活への影響、ご家族が続けられるケアを整理しましょう。

がんに対する治療を行わないことは、愛犬へのケアをやめることではありません。 苦痛を和らげ、日々の変化を見守りながら、その時々の状態に合った対応を獣医師と考えていくことが大切です。

ご家族が何を大切にしたいのかを共有し、迷いや不安を一人で抱えずに相談してください。愛犬のために選択肢を確かめ、考え続けることを、これからのケアにつなげていきましょう。

※本記事は一般的な情報をまとめたもので、個々の犬の診断や治療方針を決めるものではありません。実際の対応は、愛犬を診察している獣医師にご相談ください。


犬のがんに関する情報を探す際、まず基本となるのは、かかりつけの動物病院の獣医師にご相談いただくことです。その上で、必要に応じてセカンドオピニオンを求めたり、がん治療を専門とする獣医師の情報を集めたりすることも有効な手段となります。 当研究室のウェブサイトでも、犬のがんの症状、治療法、食事管理、免疫ケアといった様々な情報を提供しており、参考にしていただけるかと存じます。 また、もし獣医師に直接確認しにくいことや、例えば当研究室で扱っているサプリメント「コルディ」について詳しくお知りになりたい場合は、弊社に直接ご相談いただくことも可能です。お電話(048-474-0884)やウェブサイトのお問い合わせフォームから、どうぞお気軽にご連絡ください。

監修獣医師:林美彩  所属クリニック:chicoどうぶつ診療所

林美彩

代替療法と西洋医学、両方の動物病院での勤務経験と多数のコルディの臨床経験をもつ。 モノリス在籍時には、一般的な動物医療(西洋医学)だけでは対応が困難な症例に対して多くの相談を受け、免疫の大切さを痛烈に実感する。
ペットたちの健康維持・改善のためには薬に頼った対処療法だけではなく、「普段の生活環境や食事を見直し、自宅でさまざまなケアを取り入れることで免疫力を維持し、病気にならない体づくりを目指していくことが大切である」という考えを提唱し普及活動に従事している。

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