猫ちゃんの中で有名なウイルス病の一つでもある『猫白血病』について、お話していきたいと思います。

 

 

<猫白血病ウイルス(FeLV)と感染経路>

ガンマレトロウイルスに属するRNAウイルスの一種で、感染した猫の唾液や涙、尿や糞便などに含まれたウイルスが、口や鼻から入ることで感染します。

具体的には、猫同士で喧嘩をして噛みつく、じゃれて舐めあう、食器やトイレを共有することなどでも感染します。

また、感染した猫が妊娠した場合には、母猫から子猫へも胎盤や乳汁を介して感染 してしまいますし、母猫が子猫をグルーミングした際に唾液から感染することもあります。

猫白血病ウイルスは環境中では非常に不安定で、室温では数分から数時間で感染力を失います。

しかし、ペットシーツなどのような湿った場所ではやや長く感染力を保持することがあります。

 

その他、2002年に日本大学の調査チームからは、「ネコノミに感染している猫ではFeLV感染率が高くなる傾向が見られた」という報告が上がっています。(Maruyama, 2002)

 

 

<猫白血病(FeLV)で見られる症状>

初期の症状としては、発熱、元気消失、リンパ節の腫れ、貧血などが見られ、これらの症状が1週間~数カ月ほど続いた後、一度は症状が落ち着きます。

ただ、ウイルスが体内からいなくなったわけではありませんので、再度症状をぶり返す子も多く、その後、数年でリンパ腫や白血病のように腫瘍性疾患に進行してしまう子もいらっしゃいます。

 

ウイルスによって骨髄が侵されてしまうと、再生不良性貧血や白血球減少症等を引き起こすことで免疫力が低下し、日和見感染を引き起こしやすくなります。

 

その他、FeLV感染によって糸球体腎炎を起こし、腎不全に進行すると、多飲多尿、食欲不振、体重の減少、貧血などが見られます。

 

母猫が感染している場合は、流産や死産などが起こったり、生まれた子猫が早期に死亡する場合があります。

 

ウイルスが潜伏感染したまま、発症せずに残念ながら完治することは難しく、数ヶ月から数年で死に至る感染症です。

 

また、猫白血病ウイルス感染症は、進行速度・特徴により4タイプに分類されます。

 

①進行型

最も重症化するタイプ。

リンパ組織や骨髄、粘膜層、腺性上皮組織で増殖、のちに免疫が働きにくくなり、感染・発病した猫のほとんどは3-4年以内に死亡するといわれています。

 

②退行型

猫自身の免疫応答がウイルスの増殖を抑え込み、骨髄に侵入する前段階で体内から駆逐するタイプ。

ウイルス自体が複製されたり、体外に排出されることはありません。

 

③未発達型

感染しているのに、ウイルス、高原、ウイルスRNA、プロウイルスDNAを検出できないタイプ。

人為的感染後で稀に見られるタイプ。

 

④局所型

ウイルスが全身ではなく、脾臓、リンパ節、小腸、乳腺など局所にとどまるレアケース。

 

 

<猫白血病ウイルス(FeLV)に感染する危険因子>

・オス猫(メス猫の2.4倍

・成猫(7カ月以上の成猫の場合、子猫と比較して2.5倍

・放し飼いの猫(家猫の8.9倍

 

と言われています。

野良猫さんは猫白血病ウイルスの保有率が家猫さんよりも高いため、保護猫さんを迎える時には、必ずウイルスチェックを行ってください。

 

<猫白血病ウイルス(FeLV)の検査方法>

血液検査により感染の有無がわかります。

ただし感染直後は検出できません。

検査でわかるのは、直近の接触から約1か月後です。

 

保護直後に検査を行って得た結果、陰性の場合には、1か月後に再検査、陽性でも、再検査で陰性になることがあるため、何度か検査をします。

繰り返し検査を行い、陽性であれば、感染が確定的になります。

 

リンパ腫や白血病等の症状があり陽性が出た場合は、1度のみの検査で判断する場合もあります。

 

また、子猫の場合には、母猫からの移行抗体の影響で正確な結果が得られないことがありますので、保護して1ヶ月後でかつ、生後3ヶ月を過ぎてからの検査をお勧めします。

 

 

<猫白血病の治療法>

体内のウイルスを消し去ることは、残念ながら現在の獣医療では不可能です。

それぞれの症状に合わせて、苦痛を緩和させる対症療法を行います。

 

主な対症療法

・インターフェロン

・抗生物質

・抗炎症薬

・抗がん剤

・輸血

・点滴

 

 

<他動物種への影響>

猫固有のウイルスのため、ネコ科以外の人をはじめとする他の動物には感染しないと考えられています。

 

 

 

<同居猫へのかかわり方>

前述したように、猫白血病ウイルスはグルーミングや喧嘩など、容易に感染してしまう恐ろしい感染症です。

 

そのため、猫白血病ウイルス陽性の子のほかにも同居の子がいる場合には、隔離することが重要です。

食器やトイレを介した感染リスクもありますので、理想としては感染猫さんとほかの子は、完全に別部屋で過ごすことをお勧めいたします。

 

新しく迎えた子がウイルスを保有しているかどうかわからない場合には、ウイルス検査で陰性が確認されるまでは、隔離することをお勧めいたします。

 

ただ、どうしても感染猫さんとの隔離が難しく、同じ空間で過ごさなければいけない場合、猫白血病ウイルスを含む混合ワクチンがありますので、ウイルス検査で陰性が確認できた子に関しては、混合ワクチンを接種するという方法もあります。

 

ただ、混合ワクチン接種も100%感染を防ぐというものではありません。

『感染が成立しにくくする、発症しにくくなる』という状態を作るものになりますので、確実に感染させない状態を作るためには、やはり感染猫と触れ合わないような環境を作るということが大事であると考えられます。

 

すでに感染している場合にワクチンは無効であるばかりか、安全性が確立していません。

ワクチン接種前には必ず検査を受けてください。

 

 

<猫白血病を発症させないためにできること>

猫白血病ウイルスは、自己免疫がしっかり働いていれば発症することを抑えることも期待できます。

逆に言えば、ストレス等をかけることで免疫バランスが崩れ、発症させてしまう可能性があるということでもあります。

 

猫白血病ウイルスの感染の有無にかかわらず、ストレスは免疫バランスを崩し、感染症や自己免疫性疾患、腫瘍等を引き起こしてしまいますので、ストレス要因を避けた生活を送らせてあげることが重要です。

今一度、普段の生活環境やお食事の見直しをしてみてください。

 

また、免疫を整えるためには、腸内環境を整えておくことも重要です。

腸内細菌を調べる検査等も出てきておりますので、毎日良い便が出ていても、一度検査を受けてみて、腸内細菌のバランスを確認してみるのも良いかもしれません。

 

猫白血病ウイルスを予防する基本は、完全に室内外にして、他からウイルスをもらわないということになります。

ただ、もし迎え入れた子が猫白血病ウイルス陽性だった場合でも、100%発症するというわけではありません。

大切なご愛猫が、最期の時までご愛猫らしく過ごせるよう、日頃からストレスフリーな生活を過ごさせてあげながら、ご家族皆さんでニャンライフを楽しんでください。